自分がイップスを経験し克服する際に学んだこと、とくに克服するためのエクササイズについてまとめてみました。
この記事がイップスに悩む野球人たちの助けになれば幸いです。
「イップスって何?」という方は前回の記事を参照してみてください。

イップスはいろんなスポーツにつきものですが、この記事ではとくに野球のイップスについて説明しています。
他の競技では参考にならないこともないかもしれませんが、当てはまらないことも数多くあるかもしれません。
ややこしいタイトルをつけてしまって申し訳ありません。
目次
不治の病ではなくなったイップス
一昔前はイップスが原因でスポーツをあきらめる選手も少なくありませんでしたが、いろいろと明らかになりつつある現在では、もはや不治の病ではなく、きちんとした治療法が確立されています。
治療法がある、ということは「治る」ということです。
簡単なことではありませんが、治療を続ける限り、いつか必ず治ります。
イップスを自力で治した僕が言うんですから、間違いありません。
まずは「自分はイップスである」と認めるところから
治療する際にジャマになってくるのが、「自分がイップスである」と認めてしまえないこと。
イップスだと自分で認めないと治療どころではありませんね。
なかなか認めづらいところもあるとは思います。
現に僕も、「まさか違うだろー……」と思いながら3ヶ月ぐらい高校生活をムダにしました。
今考えると非常にもったいないことをしたなと思っています。
自分の弱点を認識することも、強く・うまくなるためには必要なことです。
一刻も早くグラウンドに復帰するためにも、まずは冷静に現実を受け止めましょう。
治療のためのエクササイズその1:ポジティブに考える
そんなこと言われてもムリだよ!という方がほとんどだと思います。
なので形からでもポジティブになれるように意識します。
具体的には、笑顔をつくること。
「フェイスセッティング」と呼ばれる手法ですが、とくに楽しいと思っていなくても、とりあえず笑顔になることで、メンタルに少なからず好影響を与えることがわかっています。
イップスは強い不安が原因になっていることが多く、メンタルの問題を解決すれば自然に回復していくことも多くあります。
なので、無理やりにでもいいから笑顔になる機会を増やす、そうすれば徐々にイップスが改善していく可能性があるのです。
まあ、別にトレーニングの一環だと思えば周りの視線も気にならないですよ。(笑)
その2:手の動きを見ながら投げる
イップスのときは自分の手がどんな動きをしているのかわからない、手の位置感覚が感じづらい状況にあるので、実際にボールを投げるとき、手の動きを目で観察することで不安を解消できる可能性があります。
ふだんのキャッチボールでは手の動きを見ることはないので、動作が不安定になると手の位置が正しいか不安になることがあるためです。
手がどこにあるか不安なら、実際に目で見てしまえばいいということですね。
その3:行動をルーティン化する
いつもと違う状態が不安なら、いつもする行動を決めておくことで不安に対処できる可能性があります。
いわゆる「ルーティン」を決めておくのです。
昨今ではアスリートのルーティンが話題になりましたが、それをわたし達がやっても効果的なんですよ。
ルーティンに沿って生活していくことで、調子のブレが少なくなる、ゾーンに入りやすくなるなどの効能が期待できます。
また、ルーティン化する行動はシンプルな方が続きやすいと思います。
たとえばバッターボックスには右足から入る、マウンドに立つ前には屈伸する、なども意識すればルーティンになるでしょう。
ルーティン行動が強く根付いてくると、心臓が飛び出しそうな大舞台でも、「今日もこれをやったから大丈夫だ」と自然に思えるようになってきます。
練習に参加しながらでも治療はできる
イップスだからといってずっと練習を休む必要はありません。
というか、練習に参加しながらのほうが治療がうまくいく可能性が高いです。
病院とグラウンドでは環境が違いすぎます。
何度もカウンセリングを受けて、どれだけ不安を忘れた(と思い込んだ)としても、いざ実戦に参加するとすぐ再発してしまうことも多いのです。
ここで紹介するエクササイズを続けつつ、徐々に体を実戦に慣らしていくようにしましょう。
今日はここまでできた、と1日ずつ進歩を感じたほうがやる気もでます。
練習にフルで参加すると心理的な負担が重いかと思います。なので適度に練習に参加していく。
そうすることで治療の程度がわかり、克服のスピードも早まるでしょう。
イップス治療にコンバートは有効か?
前回、イップスの原因についての記事を書きました。



その記事の中で、イップスは中途半端な力加減で起こりやすいということを説明しました。
その力加減とは全力の7割ぐらいの力で投げるとき、距離で言えば塁間を投げるときぐらいですね。
逆に、全力投球だとイップス持ちの選手でも発症しないことがよくあります。
内野手でイップスになった人が、外野手にコンバートするとうまくいくことがあるのはそのため。
外野手は「ボールを投げる距離が基本長い=ほぼ常に全力投球」ですから、イップスを起こしにくい環境なのです。
しかし、だからといってイップスの治療にはならないと思います。
内野手(または投手)にすぐ戻ることがあったなら、またイップスを発症する可能性が高い。
時間がたてばそのうちイップスの不安も忘れるでしょうが、その時間がいつまでかかるかわかりません。
やはり私としては、その場しのぎのコンバートをするよりかは、積極的に治療にはげむことをオススメします。
ただしこの辺は個人の考え方の差や、チーム事情が関わってくるので、ムリに治療を押しつけることはできないでしょう。
たとえばあなたの打撃力が中軸クラスなら、チームに貢献するために、治療を続けながらも外野手としてとりあえず試合に出る、というのも、リスクはありますが立派だと思います。
そうやって同時に並行して治療も続け、イップスを克服したら内野手に戻ってくればいいのです。
また、納得して外野手として生きていく覚悟ができたなら、コンバートを選択することもぜんぜんアリだと思いますよ。
とにかくやめてほしいのは、イップスだからといって「とりあえず」コンバートしようとすることです。
ルーティンをさらに増やしてみる
エクササイズのところでも紹介しましたが、イップスに陥らないためにはルーティンをつくるということが有効です。
ルーティンをつくれば、急に場面が変わっても(たとえばプレーする球場が変わったとしても)いつもどおりの力が発揮できる可能性が高まります。
そしてルーティンを増やすことでさらにパフォーマンスに安定感が増します。
たとえばイチロー選手などはロボットにたとえられるほどルーティンまみれです。
イチローは、翌日のゲームの開始時間から逆算して、寝る時間、起きる時間、食事の時間など、全てのスケジュールを決めています。
メジャーでの長い日程を戦い抜くためには、調子をブレさせるわけにはいきませんからね。
現在わたしは社会人なので、野球をする余裕があまりないのですが、そんなわたしでも日常生活の中にルーティンを組み込むことで、調子が大崩れしないことを実感できています。
朝起きたら柔軟をする、出社前には喫茶店に入る、作業中は音楽をかける…、などなど。
そんなルーティンの中には、「いつでも同じアクセサリーを身につける」ということが含まれています。
わたしの場合はファイテンですね。



上の記事を見てもらえればわかるように効能にも注目すべき点はありますが、その前に身につけることをルーティン化するということにも意味があります。
わたしは「これをつけていればいつもどおりの力が出せる!」と考え、日々身につけるようにしています。
身につけるだけでルーティンがひとつ増やせるのですから、お手軽なものです。
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